4月4日金曜日~27日日曜日まで、一宮の織部亭にて、木口木版作家の若月陽子さんと二人展「hidden mine/育む場にあってはならない」

   




4月4日金曜日~27日日曜日まで、一宮の織部亭にて、木口木版作家の若月陽子さんと二人展「hidden mine/育む場にあってはならない」を行わせて頂く。
私からすれば、聖地で憧れの大先輩と行う展覧会。本当に身が引き締まる思いでいる。
本来、織部亭の展覧会は土曜日からなのだが、変則として4月4日金曜日からにして頂いたのは、その日が「地雷に関する啓発および地雷除去支援のための国際デー」だからである。
この展覧会は地雷について考える事をテーマにしている。
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紛争地の支援、震災被災地支援の展覧会など、社会問題と関わる展覧会は、チャリティの形態を取れば称賛されるが、それをテーマにした作家の展覧会は、なぜか遠ざけられる傾向があるのを身をもって感じている。
近年、私は憲法第九条に端を発する展覧会「peacenine」に参加させてもらうと同時に、死をテーマにした23人の作家による、1年間に及ぶグループ展「禍と花」、紛争地の子どもの目線で描いた作品個展「かなしみとそれ以上の空」、世界の紛争地の支援のためのチャリティ展覧会「GOEN GOEN」、能登半島地震被災地支援のための「ノバナプロジェクト」及び「ノバナの話」を企画し、ずっと人々に「美術が社会問題を前面に押し出していくこと」を、どこかでタブー視していないか?と問うてきた。
それと同時に「美術が社会に還元できることは何か」を自分に問うてきた。
そして今はそれらに「NO!」と言うのではなく「共に考える」ための装置になる展覧会を開きたいと思うに至っている。
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地雷は人を殺すためのものではない。片腕片足をもぎ取るための兵器で、運が悪ければ死ぬ。怪我人を増やし、戦意を失くし、未来の兵士を減らし、医療機関が麻痺し、国力を低下させることが目的で、世界65の国に未だ7000万個が埋まり、1億5千万個が待機している。
安価でできるそれらは、価格相応の軽さで使用され、不相応な犠牲をもたらす。
きっとそんなことはわかっているのだ。
具体的には知らないまでも、誰もが気づいている。地雷の最悪さを。
しかし、それを突きつけられるのは抵抗がある。
「だからどうしろと言うの?」黙された言葉が見える。
作品を買ってもらうために描く。作品を買うことで誰かが救われる。
社会貢献という目に見える直接的な形は「だからどうしろと言うの?」という疑問を人々から消す。
しかし、その満足感が、目に見えない未来の不安や、本当はもっと身近な問題であるという間接的な意識を曖昧にするのも確かだ。
だから「共に考える」ためだけの、成果も達成感も見えず、貢献意識も湧かない展覧会は、人々にとっては正しさの押し売りで、不安をあおるだけのものなのだろう。
怖さを与え「だからどうしろと言うの?」という言葉を黙らせる展覧会は重荷なのだろう。
それでも美術は心に訴えかける力があるツールだ。
我々はどんな強固な岩でも、必ず砕けると信じ続けるプレイヤーでなければならない。
傍観者の想像力を育むエバンジェリストになろうとしなければならない。
この展覧会はその挑戦のひとつである。
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4/4金曜日に始まるが、オープニングパーティーは翌日の5日土曜日の17:00から行われる。
その日のメインは、山下瞬、田中百合子二人の素晴らしい若手音楽家によるミニコンサートだ。
二人ともヨーロッパで研鑽を積み、山下瞬さんはヴァロックチェロやヴィオラ・ダ・ガンバなどの古楽器にも精通するチェリスト。田中百合子さんはバッハをこよなく愛するピアニストで、現代音楽にも造詣が深い。
二人に演奏をお願いするに至ったのは、もちろん二人とも旧知の間柄であるのもあるが、この展覧会が地雷をテーマにしたもので、坂本龍一の「ゼロランドマイン」の影響もある。
ゼロランドマインの活動は、坂本龍一の呼び掛けたミュージシャンによる地雷除去のためのチャリティで、売り上げの全てが除去のために寄付された。そしてその楽曲である。
当時、私は10枚買って身の回りの友人や家族にプレゼントしたのを思い出す。
オープニングのコンサートでは、チェロとビアノのアンサンブルでゼロランドマインの演奏もお願いした。それが楽譜起こしからの作業になると知ったのは随分後の話で、多忙な二人になんと恐れ多いお願いをしてしまったのかと、自分の無知を恥ながら、無知に感謝の今である。
間違いなく素晴らしいコンサートになる。
そして敢えて記載はしていないが、コンサート前に、少しだけ我々二人の簡単なアーティストトークも予定している。
コンサートに花を添えるほどの事ではないが、演奏家の気持ちを高める手助けになればと思う。よかったらそこから参加していただければ嬉しい。
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もうひとつのイベントは4/20日曜日の14:30からの子どもワークショップ「地雷ではなく花を作ろう」だ。(要予約)
限定15名の子どもたちと、ダンボールとモールでブーケを作る。
その中で、読み聞かせユニット「ぱんぱかぱん」さんによる朗読、パフォーマーのチャーリーホッパー&駒さんのユニットbuntanによる創作紙芝居がある。
どちらも地雷、戦争という切り口から、優しい眼差しで子どもたちに向き合ってくれることになりそうだ。
こんな風に、色んな表現によって伝えていきたい。
こちらも楽しみにしていただけらと思う。
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最後に。
二人の作品について。
それぞれがテーマに沿って制作をすると同時に、二人のインスタレーションをセンターに据える。それについては入念にミーティングをしている。また、DMのメインヴィジュアルに使用した作品は、私と100人の子どものコラボだ。大変苦労した作品だが、無事DMになって安堵している。
DMは全て私のイメージで作らせて頂いた。懐の深い若月さん大島さんの、黙って私を掌の上で遊ばせてくださるその態度に感謝しかない。
どの作品も、我々が美術作家であるからこそ生まれる表現になっている。
観てくださる皆様が、想像の翼を広げられる装置として存分に機能することを願う。
そして、余すことなく堪能してもらえるように努めていく。
オープニングイベントは、駐車スペースに限りがあるので(ゆうとぴ庵の駐車可)、乗り合わせ等検討をお願いします。

織部亭: 〒491-0834 愛知県一宮市島崎1丁目11−19
                 tel.fax. 0586-76-1993